↑ 出征する方の無事を祈り、一針づつ通行人に縫って貰う『千人針』

鵠生園には誰もが足を止める場所があります。

通称『昭和コーナー』

10年以上前となりますが、ご利用者の〝今〟や〝今後〟を考えるだけでは何かが足りない。

どんな時代を生きてこられたのか〝時代背景を学ぼう〟と自主勉強会。

資料を集めるだけでなく、ご利用者に〝若かりし頃の時代〟を伺いました。

 

・・誰もが大切な人を戦争で失っていました。

・・・誰もが忘れられない記憶を心に秘めていました。

あまりに壮絶な内容に言葉を失うことばかり。

この穏やかな笑顔の奥底には、誰にも話せなかった辛く悲しい思い出がどれほどあるのだろうと。

人の命が軽んじられていた時代。

 

Sさん(女性)

戦前では稀有な恋愛の末に結婚。

しかし、赤紙召集で一緒に過ごせたのはたったの1年半。

必ず帰ってくるからと約束。

南方に派遣されたことまでは知ることができたけど、終戦の混乱で消息不明。

帰ってくる、約束を守ってくれると信じ続け、信じ続け、信じないと生きていけない想いで待ち続け、昭和21年夏に戦死通知。

硫黄島での玉砕。

遺骨は未だ帰らず。

だけど、その人は待ち続け待ち続け、自分が精一杯生きたら必ずご主人が迎えに来てくれると信じ待ち続けました。

「一生懸命に生きないとあの人に顔向けできない」

「あの人の分まで楽しんであげないと」

「私はこんなおばあちゃんになってしまったので、主人が迎えに来てくれた際に驚くんじゃないかしらねぇ」とよく笑っていました。

数年前に他界。

ご主人が迎えに来てくれたんだなぁーと思いました。

 

ご利用者と話すにつれ、様々なものを託されました。

自宅に置いておけばいつか捨てられてしまうもの。

だけど、思い出がいっぱいあるもの。

そこで思い付いたのが展示コーナー。

ご利用者さんが昔を懐かしめる場所。

ちらっとご紹介致します。